現代語訳 般若心経

現代語訳 般若心経 (ちくま新書 (615))

現代語訳 般若心経 (ちくま新書 (615))

 入門者向けということを著者は意識しすぎのようでもある。くだけた語り口なら読みやすいというわけではない。
 重要な部分は繰り返し語られるのだけれど、繰り返したからといって理解が深まるとは限らず……。「空と中観」という本も途中まで読んでいて、こちらの方は長大で難解で厳密で、半分も理解していないような気がするが、しかしやはりこちらの方が何かをつかんだような気がするというか手応えがある。


 著者が量子論を押さえているのは意外で、「空」と量子論を比較するくだりは興味深い。厳密には量子論をよく理解していないように思える点もあるが……。

 10代半ばごろにハマった量子論。その量子論に携わった科学者が「空」の思想を知っていて、自らの理論と関連付けて著述していたことは、個人的な思想史における巡り合わせのようなものも感じる。って、そんな大したもんでもないけどな。