スワロウテイル/幼形成熟の終わり

スワロウテイル/幼形成熟の終わり (ハヤカワ文庫JA)

スワロウテイル/幼形成熟の終わり (ハヤカワ文庫JA)

三ヶ月ほど前に前作を読みました。
http://d.hatena.ne.jp/sawami/20111003#p1


本作ではサブキャラクターについても深く描写されており、
それぞれに共感を覚えたり、あるいは耳が痛いことを言われたりします。
また、重層的なプロットは作品の舞台となる自治区の多層構造との暗喩にも思えました。


今回敵役となるのはあるテログループです。
その中心となる人物の言葉は、読むごとに痛みを感じるものでした。
作中で”坊や”と揶揄されるように、ある種の成熟から遠ざかったまま時を過ごした人間の言葉です。


痛みを感じると書きましたが、正直に言うと共感です。
本心では、世界を壊そうとするテロリストの言うことに共感してしまうのです。
でも、彼の言うことは間違っているということも理解しています。
理屈としてだけ理解しているわけではないはずです。
彼と対立する主人公とその仲間に憧れる気持ちもまた私の中にあるからです。


この感覚はたぶん著者も同じなのではないかと思います。
憧憬の対象をキャラクターに映じているのでしょう。
それは作中の精神原型師が人工妖精を産み落とすが如くに……。


もう一つ、装幀のイラストについて。
私の場合、買うときに装幀を見て、カバーをかけたまま読了。その後、本棚に入れるときにカバーを外します。
その時にイラスト見返して、何か感慨深くて思わず息をついてしまいました。
前作を取り出して、二つ並べて眺めて……隣り合わせに収納しました。

シャープでありながら、柔らかさを感じさせる絵柄も世界観によく似合っていますね。


本作は、前作より著者の作風が色濃く出ています。
前作がよかったと思う人は是非読んでみて下さい。



あと、ところどころにあるパロディネタで吹き出してしまって困りましたw
以下、格納します。


これは、曽田とその後輩のやりとりなんですが、

「だ、だって、上から女の子が落ちてきたんですよ! 確かに見ました!」
「気のせいだ!」
「見ましたよ! 黒いスカートが翻って、水色の縞模様のパンツがはっきり――!」
p33

この後輩、なぜそこだけはっきり視認しているw
しまぱんネタのために、変なキャラになっちゃって可哀想。


他にも、シリアスで緊張感のあるシーンで”中に誰もいませんよ”とか。いいのかw
編集の人、わかっててやってるんですよね。知っててやってるんですよねw


私はこういうの好きなのでこれからも自重せずにやっていただきたいw