固定電話の隠れた効用と懐古
突然ですが、あなたは電話応対をどこで身につけましたか?
新人研修、アルバイトの研修などが多いかもしれない。
でも、その基礎となっている(なっていた)のは、自宅の固定電話ではないだろうか?
固定電話の受話器をとった時、とりあえず外向きの声で話すのは、相手が誰だかわからないからだ。
受話器をとったら、まず名乗る。相手が名乗ったら、こちらが名乗る。それは、家族の電話応対を見るうちに、しつけられるうちに、自然と「当たり前」になっていく。
電話のやり取りの基本は、幼いころに見て取った経験がベースなのではないだろうか。
最近の新築の家では、電話線を敷かないことも多いかもしれない。
そして、電話機のない家庭で子どもは育つことになる。
そうなるとどうだろう。
どう変わるのだろう。
よく思い出して欲しい、電話機の受話器をあげていたあの頃を……。
誰かが受けた電話を、誰かに代わる。自分が会ったことのない、家族の知人の声を聞いた。
あわててサインを送って、居留守を使う。少しだけ言い訳したくなる後ろめたさ。
そんな、なんでもないようなことが、だんだんと懐かしくなり、映画や小説のなかでだけ見られるようになり、子どもたちには理解できないことになる。
いつか、誰かが携帯電話を懐かしむとき、彼らはどんなシーンを思い起こすのかな。