シャングリ・ラ

シャングリ・ラ

シャングリ・ラ

 温暖化のため、世界のメインパラダイムエコロジーに移り変わり、経済もその例外ではなく、炭素経済とよばれる新しいシステムに変わる。そこでは今よりさらに高度化・複雑化した金融工学のなかで排出量取引が主たる取引物件となっている。

 この世界設定は、少しだけ金融工学やら、経済学(ピグー税)やらをかじった人間にとっては、決して荒唐無稽とは思われない、説得力のある設定だ。
 目標が叫ばれるばかりで排出量削減が一向に進まない現状において、炭素排出量の削減を実現するには国家内の環境税に相当する、ある種の懲罰的な課税システムを「国家間に」導入するという方法は最も現実的な落としどころだと思う。
 (作中の金融工学は調査が足りないか、私の不明か、よくわからない仕組みもあるが……)


 しかし、最も注目すべきは森の描写だ。そこで描かれる自然観は都市部で育った人には生々しくさらりと読めてしまうようなものではないだろう。



 あーあーあー、でもこの本、世界設定はめちゃくちゃ魅力的なのに、途中から池上さんが飽きたのか編集が口出したのか、変な方向にいくんだよなぁ。

「あぼぼぼぼぼぼぼ」
 小夜子

 この辺はまだいいんだけど、途中から出てくる涼子はむしろ登場させないほうがよかったんじゃないのかなー。転の部分が引き伸ばされてしまって、読後感が薄くなってしまったかも。各キャラには一番の見せ場が一つだけあるというほうが、キャラクター小説的には、角川的には成功なんじゃないのか?
 でもまあ、とりあえず続編あるらしいから読んでみようかしら。