世界の中心で月に吠える(劇場版)

 朔太郎と亜紀の二人は外道です


 二人は二人の世界を生きました。制約があったとしても、そのうえで好きなようにしました。二人は幸せだと思いますよ。
 病が苦しかったとしても、死の恐怖の他に別れの悲しみをもって死ねるならそれで十分ではないでしょうか。喪ったら痛いようなものが一時でも世界に在ったならそれで十分ではないでしょうか。この二人に、なぜ律子が巻き込まれなければならないのか。


 一人の少女は足を砕かれ全身を地面に打ち付けられてもなお一本のテープに手を伸ばします。テープの内容を知らなくても、大好きなお姉ちゃんを見ていれば彼女がそれをとても大切に思っているということがわかるんですね。そしてそれに応えようとする純粋で無垢な善意を律子は持っています。だからこそ彼女自身のその善良さがはね返って罪の意識となり、彼女はずっと責め苛まれることになります。不条理です。