奇蹟の飛行艇―大空に生きた勇者の記録 (光人社NF文庫)

奇蹟の飛行艇―大空に生きた勇者の記録 (光人社NF文庫)

 

 ミッドウェー海戦以降、長く辛い撤退戦が続く。この中で筆者の同期生も次々に命を落とす。物資も不足し、飛行機も失われてゆく。

終戦直前には外地に飛ぶ飛行艇は筆者の乗機のみとなる。最後まで生き残った奇蹟の飛行艇となったのだ。

 

 

この奇蹟の背後には、たゆまぬ訓練があり、冷静さと果敢さを伴う判断力があった。

戦闘機に対抗する手段を持たぬ飛行艇はいざとなったら雲の中へ逃げ込むしかない。これを見越して、常識外れに危険な、積乱雲の中を飛行する訓練を繰り返していた。この訓練は自らの危機を脱するためにも、困難な救出作戦飛行の実現にも必須の条件であったろう。

重爆に遭遇した際には、衝突するコースをとって反航戦を挑み、相手に回避行動を強いて活路をひらい。反抗戦では容易に敵弾を受けにくく、相手が回避することを見抜いていた。