ガープの世界

ガープの世界〈上〉 (新潮文庫)

ガープの世界〈上〉 (新潮文庫)

 
ガープの世界〈下〉 (新潮文庫)

ガープの世界〈下〉 (新潮文庫)

 

 スポーツ講座のメンバーに翻訳の仕事をしている方がいて、おすすめの作家としてオースター、アーヴィングを挙げてもらった。

 オースターのシティ・オブ・グラスを既読だったので、こちらを読んだ

 

 近現代アメリカの歴史文化を知らないせいだろうか、共感的に読むことができない。

 いや、アメリカ人のメンタリティーが想像できないのだろう。

 

下巻

P346

「ヘレン、ぼくは思うんだけど、ぼくたち、みんなよりもスタートが一歩、早かったんだ。だから、途中で長いタイムアウトがとれるんだよ」

P351

 かくてガープの生活に摩擦は維持された。ある種の摩擦がなければ、自己を見失い、世界の把握ができなくなるガープ。小説を書いていないとき、ガープが人間として生きていられたのは摩擦のおかげである。フィールズ基金ロバータ・マルドゥーンが最低限の摩擦をあたえてくれることだろう。

P365

不寛容なものに対する寛容さ――これだけはガープの美点にはないことだ。気違いじみた人間を見ると、ガープも気違いじみてくる。それはまるで、自分を狂気に追いやる彼らを個人的に憎んでいるかのごとくだった――ひとつには、彼が正気の振舞いをしようと、しばしば必死の努力をしているせいもある。正気のための努力をあきらめたり、それに失敗したりする人間がいると、ガープは努力が足りなかったのではと思ってしまう。