オールド・テロリスト

 

オールド・テロリスト (文春文庫)

オールド・テロリスト (文春文庫)

 

  中心となるフリーの記者は精神的に不安定で、ほとんどのシーンで安定剤を飲んでいる。素面でいることがほぼない。

 それでも特殊な人物だという印象は受けない。この種の薬が広く普及し、服用されるようになっている。

 

「今元気な人間って、どこかおかしいわけでしょ? そんな人をポジティブに紹介するメディアって発狂してると思いますけど」

これは現代の日本人が抱く不安というものへの洞察につながっていく。元気でない人、正常な人の不安とは何か。不安であるということはどういうことか。 

 

 

 もう一つの大きなテーマは自殺について。

 あの時、自殺しなかったのはなぜなのか。

 作中の人物から語られるその理由に私は納得した。もっとも大概の人間はただ恐ろしくて実行に移せないということだろうが。

 

 

 だから、本当に日本全体を焼け野原にすべきなんだ。

 一理ある妄言だ。人口構造をピラミッドにすれば解決する問題は多い。

 

 

 満州から秘密裏に持ち出された88ミリ対戦車砲:通称アハト・アハト。

 世直しのためテロリストとなった老人たちがこの巨砲をぶっ放すという超絶ロマン設定。

 海洋堂の社長が私有する本物を取材したらしいことが後書きにあったが、こんなに楽しい取材はなかったとあって大草原