中国化する日本

中国化する日本 日中「文明の衝突」一千年史

中国化する日本 日中「文明の衝突」一千年史

現在は増補版が出ているが、図書館で上を借りた。


興味深い内容である。
社会学、思想史、歴史などに詳しい人は、さらに興味深いと感じられることだろう。


私の理解では以下の通りである。


経済制度と政治制度の組み合わせは時代につれて変遷するが、その極相、到達点は、中国・宋朝において「達成」されているものであり、日本を始めとした他の国においてもこの「中国化」の流れは止まらない。


経済的には自由主義を旨とする「中国化」と対比して、戦後日本がもっとも成功した社会主義であるといわれるようなこの日本の傾向を「再江戸時代化」と名付けている。
これは封建制といってよいものである。つまり、身分制などの自由の制限が大きいがこれはまた、家禄と農地の固定化により安定をもたらすことと表裏一体である。


全体に、本当に全体に、筆者の皮肉な口ぶりがあふれているので、はっきり言って読んでいて不快である。
そこを諦めてしまえば、学術的な内容は興味深いものであり、久々に読み応えのあるものを読んだ気になった。



ちなみに、網野善彦に影響を受けてるとのことだったが、先日読んだ「影武者徳川」の隆慶一郎もまたこ網野史観をモチーフにとって小説に組み込んであるということで、奇妙な暗合を感じた次第である。